きゅうふんにて/吉岡ペペロ

金山の名残を観光地にしたきゅうふん
千と千尋の神隠しの舞台はここをイメージしたとかなんとか
狭くて急な階段を上がるひと下りるひと
スマホで写真を撮るひとたちのせいで
階段のながれがものすごく悪い
進まない
こんなところで将棋倒しで死にたくない
狭くて急な階段
赤い提灯と眼下には山のつづきと海と夕闇
足をとめるひとたちのスマホにいくつも映って揺れていた
ちょっとした万華鏡のようだ
ひとびとの間に肩をいれて
こんなところにいるのは嫌なんだ
爆発する研究所から逃げるようにそこを下りた
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