土に暮らす/鵜飼千代子
五メートル×五メートル、市民農園の区画ふたつが
わたしの詩の研究室
今、研究室では白いつるバラ「新雪」が咲き乱れ
萩「あすかの」がこんもりと枝を伸ばしている
土に金属の支柱を五十センチほど埋め込み
ビニールをかけた雨避けハウスでは
トマトもプチトマトも実をつけだした
秋に植えた、
不揃いで歯抜けて育った玉ねぎはもうすぐ収穫
土嚢袋には安納芋を植え
大根と人参は交互に種を蒔いた
キュウリ、ナス、トウモロコシ、ニンニク、ニラ、
長ネギ、イチゴ、スイカ、バジル、まだまだある
カナヘビが足下をすり抜けて行く
アマガエルが跳ねる
カマキリの卵
ナナホシテントウがアブラムシを狙っている
今年で七年目だが、手付かずの年もあった
昨年はセイタカアワダチソウが二メートルにも育ち
夫にも手伝ってもらい大除草大会となった
今年の土はふかふかで
掘る場所掘る場所、ミミズが現れる
植物と小さな生き物たちの種間競争を見つめながら
ささやかな収穫を喜ぶ
わたしは 土に暮らす
平成二十六年五月二十六日
初出 詩誌「焔」第100号 所収
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