めまいがする夜/吉岡ペペロ
言ってしまった
分かるから言ってしまった
めまいがする夜
近くの室内プールに行ったことを
心配させたくなくて
弱いと思われたくなくて
みにくい心を知られたくなくて
ぼくはあの夜
水のなかで忘我した
鼻水みたいなたんが途切れなかった
息をとめて50泳いだ
泣きながら泳いだ
ごめんなごめんな言いながら水を叩いた
名前を叫んで泳いでいた
どこかに近づける
どこかに近づける
めまいがしてるのか息が苦しいのか
ずたずたになりたかった
ずたずただった
言ってしまった
分かるから言ってしまった
めまいがする夜
近くの室内プールに行ったことを
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