円空さんより太郎さん/吉岡ペペロ
円空さんの木彫りの仏像を観にいったのに
円空展よりさきに常設展をまわってしまった
千年以上まえに作られた仏像が何体も置かれていた
微笑する仏像が発する古代と洗練の息吹に
ぼくは合掌せずにはおれなかった
常設展をまわり終えてから円空展に入った
木彫りの仏像が常設の仏像よりも強い笑みを浮かべていた
円空さんは江戸時代のひとだ
だからだろうか古びた感じの像がなかった
古くても昭和や大正に彫ったもののように見えた
であるのに常設されている仏像よりも
新しさというようなものがなかった
博物館をあとにした
たまたま岡本太郎さんのオブジェとすれ違った
薬品会社の入口に置かれたオブジェだった
それがいま天を向いて笑っていた
円空さんより太郎さん、ぼくはそう呟いていた
それは円空さんの仏像と似ていた
けれど古代の仏像とおなじ息吹を発していた
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