看取り(2)/吉岡ペペロ
スキヤキ食べに来なさいよ、と入居者の方にまた誘われた。
ぼくは屈んでこのご婦人に笑顔を返す。
ご婦人はもうしかめっつらの真面目な顔になって午前のひかりのなかに消えてゆく。
ぼくの仕事は介護福祉士たちのサポートだった。
少なくとも最初の一ヶ月まではそれだけだった。
それがそうではなくなったのは先月からだ。
ある日リーダーに呼ばれるとテーブルに紙が一枚と紅茶が置いてあった。
深夜のお仕事は、昼間の時給の二倍になるわ、あとは、お子さんの面倒をだれが見るのか、だけれど、
リーダーがガムを噛みながら勢いよく話し始めた。ぼくはひとまず紅茶を飲み干した。
この国の太陽はしずかだ。無口だ。だけど
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