1983年2月の夜/吉岡ペペロ
 

失うことを見つめている

悲しい気持ちを確かめている

30年経ってもなにも変わらない

あの頃から泣き場所をなくしていた

私は忘れるのが得意になっただけだ

強烈な自白剤を打たれたところでなにも思い出せないだろう

こんな日がふたたび来るようなことがない限り


私は寮の4階から校舎の2階のひかりを見つめていた

あそこで私の処罰が教師たちによって話し合われているのだ

左手のだだっ広い校庭が濃い群青の底に白い静けさを沈ませていた

私は日曜日の昼下がりをあのときと同じような気持ちで見つめている

ぜんぶ私が蒔いた種であり私が蒔けなかった種なのだ

あのひかりが消えたとき私の処罰の会議が終わるのだ


失うことを見つめている

悲しい気持ちを確かめている

30年経ってもなにも変わらない

あの頃から泣き場所をなくしていた

私は忘れるのが得意になっただけだ

強烈な自白剤を打たれたところでなにも思い出せないだろう

こんな日がふたたび来るようなことがない限り
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