路上の野菜売り/鵜飼千代子
 




「路上で突然ですが、
果物買ってくれませんか?」
「さっきまで
そこで売っていたのですが、
少し残っちゃって」



立川駅の歩道橋の下で
前を歩いていた人に袖にされた、
30代半ばの青年が
声をかけてきた



両手で抱えている箱には
梨ともうひとつ
箱が入っている



「見せて」
わたしがそう言うと
地面におろし
商いを始める


「いくら?」
「さっきまで1つ400円で
売っていましたが、
3つで1000円にします」

「わたし千葉から来たの
その大きさだと産直農家で
1つ350円くらいだね(贈答用で)
他に
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