市場にて/
梅昆布茶
市場の朝は早い
そこには人間の胃袋を満たすという生の根源に直結した欲望の匂いと独特のエネルギーがある
狩人が獲物を担いで去ったあとに残された空間は
歯の抜けた老人の
ように
手持ちぶさたの待ち人顔なのだ
市場には
なんとなく人の痕跡のなかでも
いちばん濃いものを感じてしまう
それは生命が他の生命を奪うことにによってしか生き得ないという
宿命の場であるから
僕たちは命を食べて生きているのだ
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