石像の息子/吉岡ペペロ
 

この王宮は大戦時ソ連軍によって破壊された

降伏後三ヶ月には

瓦礫のここでコンサートが開かれている

修復のあと疎開していた美術品が飾られ

いまは市民や観光客に開放されている

入ってすぐの大ホールには石埃の香りが冷えていた

つぎの広間に移る階段のよこに

いいからだをした少年がライトアップされている

この石像をつくったひとのことを思う

その思いが風になって

こちらの精神にそぞろ吹いてくる

ペストで幼子をなくした私が

天国で成長しているであろう息子を

この世に結ぼうと

一刀三礼で鑿をふるっている
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