立ち止まるひと/吉岡ペペロ
 

カンニング竹山がいた

おっさんというオーラは出ていた

竹山さんだ、というひとはいたが

立ち止まるひとはあまりいなかった

メガネをかけた女の子に

畳み掛けるように喋っていた

撮影がおわると竹山は大人しくなっていた

頭のてっぺんが薄かった

あ、たぶん探偵ナイトスクープだ

絵本のなかの世界に迷いこんでいた

絵本もテレビもおなじようなものだ

大人が世界を切り取って

それを大人と子供が見ている

あなたがひとと重ねてゆく

それが胸にイナズマを起こす

約束を思い出す

約束を思い出す

約束だけで生きてゆく

そのほうが引き出しは増えてゆく

あなたが好きだ

あなたを抱きたい

一緒に暮らしたい

歩きたい

感じていることを聞きたい

カンニング竹山がこの街でインタビューしていた

立ち止まるひとはあまりいなかった
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