テロリストの憂鬱/
吉岡ペペロ
大学のころひとりで
ヨーロッパの映画をよく観にいった
そのあとは音大生の部屋に行くのが常だった
テロリストがひと仕事終えて
女のところに身を隠しにゆくように
アスファルトには影がばれていた
寒気で大気がうすくなっていた
顔の冷えが衣服も冷やしていた
ゴダールの右側に気をつけろを観たあとだった
ヨーロッパの映画には詩を感じた
堀口大學の訳詩をそらんじながら
女の部屋をながめて
危険を察知したテロリストは
外灯に靴音を立てて去っていった
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