悲しみの袋/吉岡ペペロ
 

ウォーキングを

きょうははやくに始められた

家々からぽつぽつと

リコーダの音色があがっている

ちかく小学校で音楽会があるのだろう

炊き込みご飯のつよい匂いがした

そこを過ぎると金木犀だ

バイクとクルマが行きすぎていった

信号を待ちきれない原付きが

横断歩道なかばではさすがに停まった

すれ違った自転車の女から生理の匂いがした

すると蚊取り線香

そのあとすく金木犀

クルマのタイヤの滑る音

かるく汗がながれはじめる

このくらいの時間

まだ町は排気ガスくさいようだ

いつもとは感じがちがう

いつもより音や匂いが多い

じぶんは袋のようだ

悲しみがたっぷたっぷいっている

いつもなら聴こえないのに

きょうはよく聴こえている
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