discarded/中原 那由多
散らばってしまった僕は
群がることが得意でないと気付き
とたんに鳥肌が立った
逃げ出したとして行き場を失うだけで
秒針がもう少し早く回ればと言ってみたところで
掬い上げたものは、既に零れ落ちている
多少の痛みなら我慢できた
それを感じさせないようにしようとした優しさを
四捨五入できなかったせいか
かえって痛みが悪化した
頑丈に鍵を掛けて生活していると
施錠を忘れた時が最も怖くて
やはり逃げ出せずにいる
甘かったり、しょっぱかったり
様々に味付けされた水に浮かんでいれば
それで満たされた気になっている
コップに注がれる量には必ず限界があり
溢れたものは捨てられる
ラベルを貼られることで
幸せを語ることが出来るらしいが
そんなもの、どこを探しても見当たらない
もう一度、笑顔というものが欲しくて
人混みに紛れて聞き耳立てた
誰から誰へ飛んでいったのか
いずれにしても受け入れられなかった
電信柱へと突き飛ばされた時はまだ余裕があり
諦めて帰ることは充分出来た
突っ立っているだけで得られたものは仮初め
書きかけの日記をぐちゃぐちゃにしてから
思いきり叫ぶことにした
戻る 編 削 Point(3)