マロンの冒険 (春)/かんな
# プロローグ
太陽の陽射しとご主人様の肌触り
どちらもあたたかい
ひざの上で寝たふりをする特技は
生まれついたもの
薄目をあけて見わたす庭はいつも
かがやいていて眩しい
さあそろそろ出かける時間がきた
すこしだけ背伸びをして
小さな僕だけの空間に飛び出そう
#1 海のやわらかさ
静けさが聴こえる
そんな朝は海への散歩
海岸線を走る車の影を追い抜いて
僕がいちばん
ゴミしかない砂浜はさびしい
だから足跡をつける
居場所はたくさんあった方がいい
波がくる足元まで
ちょこっと触れる
海はとてもやわらかい
#2 春の味見
ぽた、ぽた、ぽたり
雪解けのしずくをなめている
生きる源
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