railway/中原 那由多
傾いた日常の上
遠くへ消えてゆく遊園地
小さな観覧車が今日だけは大きく見えた
カタン、と揺れて 世間に揺られて
ただ西へ吸い込まれる
静まりかえったホームを歩く
冷たくなった18時前の空気が
乗り捨てられた自転車と遊ぶ
改札口が隔てる空間では
流れに逆らうことを煙たがられている
スラロープの上から見た電光掲示板は
訴え続けることの苦痛を知らない
白い鉄格子が守るのは
秩序であり、普遍性であり
いずれにせよひんやりしていた
終わりを表す情景が
まあるい月と対比される
眠りにつく時の沈黙
期待するふりは相変わらずで
ただ無彩色の花が散ってしまうだけ
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