哀愁/黒乃 桜
ああ 値札のあの剥がしにくい事
それを綺麗に剥がすのが趣味なの
虎になれなかった猫だか
狼になりたかった羊だか
そんなのを聞きながら
消しゴムの緑の後をごみ箱へ
冬のくせに蒸し暑い部屋で
カバー被ったままの本を見る
字余りなタイトルに苦笑して
広げもせずに感想を考えた
そんなもんだろうで片付けられた固体差は
どうせ誰かと似たり寄ったり
無自覚な子供みたいに
近しい言葉を手繰り寄せて
大人のまね事を
始めてしまうのよ
そんな昨日の生き甲斐が
そんな些細な曖昧が
スカートの裾を濡らすんだ
気付かない内にぐっしょりと
慣れれば慣れるほど熱いものが
段々冷たくなってくるのね
冷めきってしまえばもう…
さて 底は何だったかしら
戻る 編 削 Point(0)