紅色/夏嶋 真子
 



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どの色も気に入らないの。欲しいのは唇をかむ痛みの赤さ


きつね花、天秤にして恋人のふるえる声を謀りにかける


しろはくろ、くろはしろからあらわれる影絵の街でふたりは迷子


鏡から抜け出せぬきみ ”アリス”って一夜限りの名前をあげる


夕暮れのきみの影ふむ左足、ハートのあたりねらいすますの


完熟の桃にナイフを突き立てて、滴る密で夕日描いて



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こすもすや ひねもすゆれて 紅を燃す






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