悲しみ/吉岡ペペロ
 

手術からもどってきた母が

うわごとで寒い、寒いと言ったから

クーラーを切って窓をすこし開けていた

そとからはセミの声が入ってくる

甘い緑の匂い

夏の光が静かだった

肌が粘膜のように感じやすくなっている

グランドを見つめながら

悲しみがからっぽだと思った
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