蜻蛉/夏嶋 真子
 

蜻蛉が雫に映るとき、
雨の一粒一粒に
空は宿る。
濡れては飛べぬその羽は、
悲哀の純度で透きとおる。


雨の最後の一滴が
蜻蛉の羽に落ちるとき、
無数の空は連なって
ひとつの空を
生み落とす。


空は四辺に
君をかたどり、
嘆きの速度で私を抱きよせ、
繋がりながら落ちてゆく。


震える心は霧を孕み
やがて、
雨の最初の一雫になった私は
空を宿したまま、


蜻蛉の羽を青く濡らした。



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