展勝地にて/吉岡ペペロ
時間があるなら桜の名所にご案内しますよ
待たせていたタクシーで駅ではなく桜の名所、展勝地にゆくことにした
運転手さんの話を聞いているうちに展勝地につく
北上川の土手道2キロに1万本の桜がつらなっている
あらゆるところにピンクが積もっている
花びらが舞い落ちる
川むこうに昨日宿泊したホテルが見える
川端に沢山の鯉のぼりがふくらんでいる
タクシーの運転手さんの話を思い出す
花巻から東京までお客さんを乗せたことがあるそうだ
夏のちょうどこんな時間
浴衣姿の五十てまえのご婦人が東京までと言って乗り込んできた
心配に思った運転手さんはご婦人の自宅に電話をし
旦那さんがでてきて東京まで頼まれたそうだ
ぶらぶらのどかな桜のしたを歩きながら
ちらちら怜悧で暗い北上川のながれを見やりながら
その話を反芻していると
運転手さんがちいさく立っているのに気付いた
さっき話に出た蕎麦屋で二人で昼をとろうと思った
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