さ。く。ら。/夏嶋 真子
さ。く。ら。ち。る。ち。る。
さ。く。ら。ち。る。
文字は花びら、桜散る。
て。ん。て。ん。て。ん。て。ん。
転々と渡り暮らした町々の
別れの記憶に桜散る。
この町の桜とも今年でお別れ。
もうすぐ10回目のお引越し。
からだを心配してくれるパン屋のおばさん
公園でハトにえさをあげるおじいちゃん
挨拶してくれる高校生
いつも同じ電車のサラリーマン
隣の家の三毛猫
向かいの家の柴犬
電柱やポストにだって
何もかも、何もかもに、表情が浮かぶ
桜の森に日がすいこまれていくお気に入りの窓辺
夕焼け。
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