牡丹雪/夏嶋 真子
 


この浴槽を欲情で満たす牡丹雪

ひとひら、
口づけるたび、悲しみの温度が肌を焼く
ひとひら、
白い手に抱かれるまま、別れの雪を肌に降らす

この雪は溶けるため 
この白は忘れるため

あなたはそこで
わたしだけ見つめていて


背中に蛇がはえるのを
紅牡丹が開くのを
わたしが雪にかわっていくのを

またたきさえ、許さない 
今だけ見つめていて
雪が消えるその瞬間を


この欲情を抑揚で満たす牡丹雪

戻る   Point(12)