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遊佐
その風の名前は知らないけれど
黄色い砂を連れてやって来るその風の後には春が訪れることなら知っている
そこが何処に在るのかは知らないけれど
3月の空の青を背に、辺り一面に咲く菜の花の黄色なら知っている
その人の過去は知らないけれど
その人の心の中までは知らないけれど
その人の好きな花なら知っている
その人の好きな色なら知っている
その色の、その花を沢山抱いて
その人を訪ねてみようと思う
一番明るい満月の夜、若しくは
一番優しい太陽の日の昼下がりに。
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