翼を無くした嬢/見崎 光
 

何年前のことでしょう

冬の枯れ枝に
雪が花を付け
陽の温度と引換に
白肌は氷と散った

何ヶ月前のことでしょう

雪の川辺に
冬が根を張り
せせらぎの冷気と交わして
風に花を誘わせた


何日前のことでしょう

枯れ木に積もった囀りが
飛び立つ機会を伺って
日の傾きを数え始めたら
柔らかに氷が滴と化した


何時間前のことでしょう

背中に冷たい痛みが走る
冬だというのに
雪は咲いては消えた
氷の根を水面に孵し
サラサラと崩れて
飛び立つ間もなく
馴染んで溶けた



いつからか
翼は光に身を託し
飛べない空を仰いでは
むすめを脱して地を歩く
それはそれは茨の道を
ウタも唄えぬ螺旋途
慣れないおんなを背に
真綿の華になれる日を夢見て…




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