春を乗せて/見崎 光
壮大な大地に根をはり
幾通りの風と
幾重もの雨と
幾千もの時を折り
四季を労い
生命を見届け
雲に平和を
星に安らぎを
月に癒やしを
それぞれに祈りを捧げ
老木は
廻る刻みの光と影に
こんこんと沸き立つ水を
注ぎ続けている
氷を溶かす大地
息吹を澄ます空
春を乗せて
風はまた
老木の肩へとまり
眠りから目覚める鼓動を待つ
勢いを増す水流は予兆を響かせ
漂い始めた真新しい香りと
膨らみ始めた懐かしい色彩に
奏でを合わせ陽射しに応えては
もう少し先の
幼い春を想わせて
老木と風
大地と空
そして
漲る生命に合図した
春はすぐそこまで
来ている、と
老木は
優しく風に揺られながら
景色を愛しんで
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