声/見崎 光
もしあなたが
どこか遠くのほうで
泣いているとしたなら
わたしには
すり寄ることも
包みこむことも
その涙を
掬ってやることも
難しい
伸ばした腕の先に
あなたを見つけ
躊躇う指の先で
あなたを撫でられるほどの
淡い距離すらも持ち得ていない
もしあなたが
どこか外れのほうで
抱えた膝を投げ出したとしたなら
わたしには
道を刻んでやることも
風に訪ねてやることも
その肩を
持ち上げてやることも成せない
視線の届く場所で
あなたに微笑み
吐息の伝う場所で
あなたに口付けるほどの
微かな離をも拾えない
わたしが与えてやれるものは
無いに等しいかもしれない
けれどこれだけは言える
どんな時も
どこにいても
信じていて欲しいと
分かち合い
支えとなり生き
その心の傍を離れたりしないから、と
この手が
あなたの肌を温める時まで
捧げる愛を落としたりせずに…
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