記憶の旅先/見崎 光
 

掌に溢れる
小さな小さな
名前を持たない海は
誰かが忘れた
いつかの涙

そっと還した砂浜に
魅せた幻想は
いつかの真実

風舞い香る
刹那の宴
海をなくした掌は
冷たさと戯れて
指先を転がしている

魚の群れが
いつかを乗せて
遠く遠くの
小波へと消えた

誰かの涙
掬った掌に残る雫
最後の一滴を
空へ放ったなら
そこに笑顔は戻るだろうか



もうすぐ
冬がやってくる
粉雪が静かに街を訪れる頃
掌の忘れ物は
誰かを幸せにしてるだろうか…





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