線香花火/
見崎 光
秋色の冷たい風を伝い
夏を施してゆく
胸を締め付ける余韻を撫でるように
下へ下へと流れて消えた
涙を堪える癖は誰のためでもなく
移りゆく“時”に静寂を与えるため
咲いては散り
散っては咲いて
ぼやけたフィルムごしに
溜めすぎた粒が ひとつ
いつかの想いと共に
海へと還ってゆく
夏を泳げないまま見上げた
秋色を飾り始めた夜空
冷たい風は掬うように
線香花火を 眠らせてゆく
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