巣立ち/見崎 光
 

里帰りが終わろうとしている前日は
意識が無音を好み
笑顔の裏側で背中が
泣いていた

変わってゆく景色の中に
変わらぬものを探しては
胸を撫で下ろす

瞼の落ちる一瞬さえも逃してはなるまいと
刻み込んでゆく色彩
蘇る無邪気さが運ぶ重い足を
帰路の”慰め”と摩り替えた


垂れる哀愁を掻き消すように手を振って
小さくなっていく街並みに
「またね。」と
約束を溢した…






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