滲んだ世界/愛心
「好きです。」
ずっとずっと、心の中に、溜め込んでいた言葉。
「…ありがとうございます。僕は、貴女が素晴らしい方なのを、よく、知っています。
ですが、貴女に、恋愛感情はありません。…すみません。」
彼の辛そうな顔が滲んでいくのと同時に、昼休みが終わるチャイムが鳴った。
「行きましょう。授業に遅れてしまいます。」
彼が手を、私の方に伸ばし言った。
私はその手を握ると、ぐいっと引っ張り彼を座らせた。
「あ、あの…授業…」
「お願い…。この時間だけ、好きでいさせてくれない…?」
驚いた顔が一瞬見えてから、優しい表情が見えた。
「はい…。」
私は彼の手の上に、自分の手を置いた。
初恋と、初めて失恋した世界が、きらきらきらきら、滲んで見えた。
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