考えるのは生死について、そればっかり/吉田ぐんじょう
生きるのは/疲れましたと祖母が言う/空に刺さった冬の三日月
死にたいと/言えてしまう程わたしは自由/くたばることの出来ない自由
黄昏る/冬の寂しい路地裏に/孕んだ放火魔が火を産み落とす
うつぶせに/寝そべる父は頼りなく/ほっけの開きに少し似ている
イエスタデイ/五時に流れるイエスタデイ/この村は明日を諦めたのか
夕暮れの/カレーの匂いより切ないのは/線路脇に供される小さな花束
列をなし/子らが整然と歩いてゆくよ/それは葬列のようにも見えるよ
モノクロの/窓にぽつりと雨が落ち/青信号をにじませていく
多分/断末魔なんだろう/遠くに光るブレーキランプ
お願いです/生きて下さいとわたしが言う/こいぬのゴメイサも遠吠えている
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