父やその他の皆の為に/吉田ぐんじょう
秒針が/ちくともちくとも何かを刻む/焦燥をこぼす君の眼差し
自死を希う/君の髪からフレッシュベリー/毎晩シャンプーしている癖に
此の世には/奇跡もドラマも無いけれど/幻覚や妄想ならあるよって哄う
白い錠を/みつぶも飲めば楽になる/ポケットに収まるわたしの神様
死ぬことが/当たり前すぎて少し恐い/さよならの練習などしたくもないのに
眼鏡とり/浴室に座り込む深夜/鏡の中に父が霞んで
優しいのはもう/懲り懲りです/秋の陽あびて渇きゆく背骨に
単純に/解決する事ならいいのに/朝起きたら十年前ならいいのに
洗車する/父の手首が痩せている/車は綺麗になったけれども
知人にも/友人・恋人にも逢えぬ侭/一晩寝たら百年経ってた
昼花火/薄荷のように拡がりて/あとには何も残らぬのだろ
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