夜 こがね/
木立 悟
めざめては指に生まれし水かきで午後の終わりを泳ぎゆくひと
ゆきずりの他人の家の軒下に丸く在るもの季を唱うもの
届かない遠い川原に届かない指の軌跡の光あおいで
とどまらぬ明かりではない明かり持ち夜の赤子を育む鈴の手
枕もと辞書のほこりをはらう時ふとひらかれし月(にくづき)の意味
響き果てまた響くほどたおやかに揺れる背を噛む夜の二の腕
音は去りまた音は来て見つめる背ぬれた鱗の熱さ冷たさ
穂をめぐる唱のきんいろ伝わりて光からまる夜の輪の果て
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