きみのいない物語/
本木はじめ
「そっちへは行っちゃだめよ」ときみの声だけが録音されてるテープ
てのひらおもいきりひろげこれはゆび、これはつめだと思い出すまで
足音は、いつもみづから踏み込んでしまうが青い水たまりのまま
バケツからあふれる水は輝いて不滅の夏に詩もまだ不滅
胸元でレモンを齧る音を聴くいつしか眠ってしまっていたぼく
バッタとかカマキリとかを追い駆けてきみはどこかへ消えてしまった
夏空をただよう雲を追い駆けてぼくもどこかへ消えてしまった
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