みなそこテラス/望月 ゆき
 
きみがさかなになる週末さしのべた指さえ背びれの端かすめゆく



「あいしてる」吐き出す泡の数かぞえ「さようなら」にも見まごう深み



すべての色が吸収され青だけが残る孤独に想いを置いて



夕間暮れ水面がのみこんでゆく橙の果実ひろいにとびこむ



さえぎる壁の透明にきみの影スカシテンジクダイの向こう側



ふれあうことすらできぬ危うさで漂うゼリー色の海月よ



かけぬける白一色の8月にガーデンイールの揺れる砂底



朝凪にはじめの一歩踏み入れる覚悟できみの愛を手ばなす



きみが吐く泡の速度で浮上する炭酸ソーダの海の底から



水玉模様の傘さすウミウシにとおいあの日のきみをかさねる



かいま見るきみの呼吸の深度計ふれる角度で想いをはかる



いくたびも迎えては見送る恋を今日も水底テラスで待つきみ



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