ノート(窓)/木立 悟
遠去かる陽がうなずいた草の輪にやがて降り来る雨のふちどり
痛む目となだらかな背を持つものは皆それぞれにぽつんとしている
ひとりだけ此処に居ること奏でれば返る応えのありやなしや
かたくなにかたくななうた聴いている影の兄弟光の息子
その手には決して何も持たぬまま生まれつづける神を見ている
水底の窓という窓ひらかれて雨のまま来る滴に微笑む
皆が皆まぼろしになりまぼろしもまぼろしになり光る手のひら
迷い込み同じ窓から出ていったあなたとわたしうすばかげろう
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