手紙/木立 悟
「昨日はふたつの嘘をつきました今日は今日とて数え切れずに」
たくさんの傘が車道をすぎてゆく雨上がりの陽に影を失くして
風あおぎ枯れ川の春祝うのは帰る場所無き鳥のはばたき
「言うだけの言葉ばかりがあふれ出ますその次の葉を見たいというのに」
金色の光の崖に立つ家の窓から見える光の砂浜
「砂浜を崖をひとりで歩いても金はわたしを照らしはしません」
「ありえないもののみそこに甦り再びこぼれ消えたのでした」
気がつけば夜は夜に寄り添って朝のための譜を手にしている
「あなたにはいつか会える気がします幾度も春をすれちがうのち」
羽が降る近さも遠さも無い朝の野に横たわる微笑みのひと
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