エーテルの香り/シアン
 
夕立の後には土手に水たまり空蝉集めたあの夏の記憶

透きとおるラムネのなかのビー玉を大事なものと信じてた夏

「愛してる」ニワトリ小屋の粉塵が光の中に消え入る朝に

「天井のしみが魚に見えて来ない?」「よく見つけたね、ここは海だよ」

海鳴や少女の姿がよみがえる心の地図を指でなぞれば

伝説の島に人魚が棲むというプルトニウムの海の彼方に

恋人よ裾から覘く二の腕を空に喩えて満月を見る

学研の図鑑のなかのペンギンに教えてやりたい夏の暑さを

午前二時コンビニ帰りの路地裏で見つけてしまう猫の世界を
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