電子の国で/由比良 倖
死を覚悟したあの朝の太陽が僕の命を揺るがせたまま
「鬼は外」から逃げた鬼が自炊して豆などを煮て暮らしてる村
今日もまたそうめんだけで生き延びた、梅雨の終わりを少し祝った
真夜中が私のために泣いている銀河も屋根も息をひそめて
夢で見た景色みたいな音たちをテレキャスターで届けていたい
春色を日焼けした手でなぎ払う、風が中耳を抜けていく夏
存在が痛みの先へ落ちていく、音と活字が私を拾う
現世には現れてない文字たちを電子の墨で描き続けてる
文法も論理も捨てて、図鑑にも地図にも載らない世界を見ていて
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