廃園/木立 悟
 



中庭に緑の影を落とすのは独りのために建てられた家



階段と蔦からむ窓ゆらす音めぐりめぐる手すがた持たぬ手



門と門くぐる者なき中庭に降る雨のよな鳥たちの影



動けない季節は柱に寄りそって羽から生まれる羽を見ている



円窓の向こうに草は風となる水たまり交う空の底の陽



泥からも光の道は現われる石の柱の影をのばして



時を越え二人の画家の描きし絵ひとつのように壁に微笑む



彫像の瞳うるおす滴には空と地のうた過ぎし日のうた



もう誰も待つはずもない鈴の音ゆるく緑の渦を描いて



かつて見た夢の行方を示す石まぶしさのまま朽ち果てぬまま



人去りし庭に幻さざめいて午後の陽の腕ひらく穂の声







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