ノート(姫と蛇)/木立 悟
 




原に舞う少女の肩に髪の毛に見えない蛇がうずくまる午後



くずおれた樹と鉄塔は野に沈み過ぎゆくものの夢をみている



花ひとつ口に含んでまた戻し蛇と少女の無言のくちびる



雨は来る雨は来ない永遠の問いのような言の葉の舞い



川からも輪の空からも火は生まれ蛇と少女の歩みを照らす



夏に似ず秋にも似ない少女へと蛇は季節を示しつづける



蛇の背に少女は頬をすべらせて定まらぬ陽の思い出を聴く



午後の手に閉じてはひらく天気雨少女の額を映す蛇の尾



目をふせる少女の滴を蛇は聴く雨のなかの見えない冠

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