半音下がった5月/梅昆布茶
 
半音下がった5月に
飛行機雲とポケットの中のちょっとしけた煙草

わかったつもりの自分に言い聞かせてまた
あらたなる接触をこころみる深さをはかる浅瀬で

風のなかにきざまれているもの
それを聴くことができるなら風になろう種子にも

忘れなくてもいいのかもしれない
どうにもできないなんて自分だけの都合だから

感情をにぎりしめ缶詰にして階段に
蹴転がしたらばこころのどこかが反転する

不思議の森にうまれ透き通ったかいがらをまとい
秘密を共有する蝸牛になるのだな

稀薄があたりまえの存在感
揉め事もなくしめやかに咲く蝋梅に盲いたまま

存在することがあなたの愛
ただある事でよいのですこのきれぎれの

世界の街角でワーグナーを聴いて
チューニングできないギターを弾いている午後

10個めの幸運をあてにして
人混みのない夜をあるくややくすんだ街を






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