君の背中を見送る10首/竹森
光速を超える速度を見つけたよ君の背中を見送る夕べ
停電の夜のベランダきみがまた海を見たいと言ってくれたら
人は海から産まれないよ。もう夜だ、立ってても誰も上がって来ないよ。
引っ越すの。これが最後の引っ越しになると思うわ。ええ、病室よ。
人は列を成しどこまでも引く波を追い見届けた海の枯渇を
人はみな去らねばならぬ大樹より一葉(ひとよ)緑葉(みどりば)手折り萎らせ
さようなら 君と僕との鶏卵の最後の一つをゆで卵に
追うよりも鶏卵一個あたたかな椅子に供えて終えた初恋
涼しさで影を捉える盲目の君が桜を鼻先に待つ
懐かしい名字が並ぶ住宅地ここで新生活が始まる
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