冬のほほえみ/本木はじめ
 
石炭を掘りし祖父らの手のひらにひとすじ青き川の流るる


コーヒー店ここにあるぞと言う父の初恋よぎる遺伝子の夢


をさなごと眠る畳に健やかな妻うつくしき秋の遊具も


弟は真夜中銀河鉄道に眠る夢です それはまばたき


単純な空に見出す幾千の雲や千変万化のこころ


きみに似た呼吸をしている花だから摘み取ることを厭うてのひら


手身近なものをまといて暮れてゆくいついつまでも遠い胸元


残されて選ぶ道などもうなくてこのまま冬のほほえみとして消ゆ

戻る   Point(6)