十二月/魚住蓮奈
 

松の木に敬礼を(ぼくにちからを)灯台守にコーンスープを

気の毒なひと、といわれて気の毒なひとであったと知る十二月

もうみずに変わるまぎわの雪片をしんしんと抱く窓になりたい

掃除機の中に暮らして一ヶ月 星になるまでもう一ヶ月

あたまからまっすぐ落ちてあたまから砂漠に刺さるそれだけの日々

ストーブに手をかざすひとときひとは思いだす まだ迷い子であると

おんそく、と声にするときはからずも勃起する消防士 かなしい

こわれながらこわれながら舗道をあるく 月にはひとつ湖がある

透明のつめたい匂いをかぎながら おはよう、風に似てゆくひと
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