十月みそかのノートから (十首)/もっぷ
自転車で走る十月みそか頃指先ちょっぴり冬を覚えて
地方への旅の帰りの車窓から山が消えるとやすらかになる
立ち去った日々に暇をあげたあとでも変わらない時計の仕事
百日紅終わった日々に思うのはいつか消えるが命の理かと
紫陽花の終わってからもそのままのさびしい道を秋猫がゆく
キーボードgizennと打って意味を問いうなだれる日にあった出来事
冬の日の炬燵に蜜柑知らなくて冷蔵庫にはオレンジジュース
本棚に半分だけを読んである中原中也全集が痛い
午前五時朝焼け待ちの十月の風にみち聴きコンビニへゆく
きっといま世界で一番澄んでいる朝の東京あおいあおぞら
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