十月のノートから3 (十首)/もっぷ
 
みたことをみてないことにできないとその風景で秋の風鳴る


命日の早すぎるかな数えだすはじまりのきょうふた月も前


あの秋かあの冬か春か真夏には虹を二人でみる運もあり


去るものの多さに呼ばれのこるものその多さにも眩暈呼ばれる


建つ建つ建つコンクリートとガラス窓高層ビルの夜に橙


部屋に居るだけで描ける一首あり自転車がよむ一首もまたあり


先生に病院ではよまないでねと手渡されたはきみの日めくり


息しないきみに間に合い息をするきみと会ったのきのうのゆうべ


あかい葉の手探る母は風の夜さわさわさわと潮騒を聴く


さびしさにしんしん音もともなってやってくるのか冬というもの


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