蛇行/梅昆布茶
後ろを振り返るとだれもいない
たぶん肩をたたいたのは夕暮れ
漆黒が塗り重ねられてよるを待つ
あさの白さに塗り変わるまで
針千本飲まされてもうゆびきりはしないと思ったころ
ぼくは立派な裏切り者だった
私がながれて溶けたよる
正面玄関にたっていたのはだれ
億劫の時をかさねて貝となる
ただひとひらの花びらと遭う
花びらを流して一つの河となし
渡し守ならばこころをつなげよ春へ
夜行列車に飛び乗って
切符もないまま改札を待つ
母を売り父を埋めて春を待つ
芽吹く春野に挽歌も埋める
蒼穹に弓を放ちて時を待つ
降りこぼれるもの地上に満つるまで
花ひとつ誰のためでもないならば
それでも愛でるそれを恋する
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