傘を捨て (六首)/もっぷ
 
遠ざかる汽笛がみえた一枚の写真に写る撮ったひとの耳


朝の空占いは好きじゃないけれどいつかみたのはすみれの色で


風ならば南の風になることを絵本と決めた六歳の部屋


夕焼けが好きなこどもが傘を差し前向けるほど若かった五歳


立つ時を知ってる渡り間違えず少しさびしい水田の顔


傘を捨てみあげることをやってみて飛び込んでくる水晶の雨


戻る   Point(3)