オリオン/草野大悟
 
ひまわりと言われたる人白い床横に佇む僕は案山子か

ひとひとり忘れるためのひとり旅銀河鉄道片道切符

あの日から君は己を解き放ちオリオンの空歩む脳髄

あしたには歩けそうだね二人ともフォースの力信じるふたり

あちこちの線路の肉を集めつつ腰を伸ばせば空にオリオン

人がみな年越し蕎麦を食べるころ生首拾う我らは今も

オリオンを教えてくれた君がいてこの寒空を楽しんでいる

二十歳だと微笑む君の瞳の端に同級生の六十路の僕が

潮の香のあふれる町で暮らそうね夢見るように海の瞳は

赤い月子宮のようと君が言うひとりぽっちのラフランスだよ

痰を引くカテーテルさえ噛みしだく君の力を僕は信じる

鬼のようあのころを見て君は言うガラシャの眠る桜の陰で

潰された日々の暮らしは今もなおホタルとなって海を漂う

なにもかも奪い尽くして神の火はなおも奪うかあの日の現実を

どこへ行くどこへも行かぬここにいる空の命の尽き果てるまで

泣くことの人の泪の暖かさあたたかき肌オリオンの空

風を食べ夢食べ生きる風鳥の心に荒ぶオリオンの空


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